リウマチ外科医の徒然草

より良く生きるための抜け穴探しのゆる~いブログ

欧州と日本のリウマチ診療の違い(中間まとめ) 結局何が違うのか?

管理人です。

研修の期間が残り少なくなってきて、改めて海外(欧州)のリウマチ診療がどのようなものかを考え直してみることにしました。

 

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一般人にとってのrheumatologyについて

欧州では、rheumatologyという名前より、rheuma(ロイマ)という方が通りがいいです。自宅の大家さんに、「AKHで何をするの?」と聞かれた際に、ロイマといったら納得してもらえました。

 

こちらでは、リウマチ医への紹介・referenceは、

 

関節が痛い、腫れている => collagenose(膠原病)の可能性

、l。

として積極的に送られてきています。

(Drはあまりにひどい振りにはいつもへきへきとしています)

 

もちろん、OA(変形性関節症)もリウマチ医の診療範囲です。

 

なので一般人には、なんだか痛くて、家庭医HausArztに痛み止めを出してもらって改善なければすぐに受診を勧められます。

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ということで、

玉石混交の状態でほぼ説明なしで紹介される。

 

患者としては自分がどうなるのか知りたいことを知れずに病院送りになるようで、すべての初診患者が心配げな顔をして来られます。

 

リウマチ医 = 痛いのを治す人 なのです。

 

 

ところが、あまり指導はされないようです。

看護師の関与は採血のみ。パンフレットは置いておく。

国民性ですが、公共の場でもどこでも、何なら病院でも(!)タバコを吸います

町中に灰皿が置いてあって、時にその中で延焼しています。。。

 

さすがにDrからタバコのにおいを感じたことはありませんが、

患者を減らすのなら、またはコントロールを改善するには禁煙指導は必須のはずです。

ところが自己責任というか、個人の問題として扱っているようです。

 

 

診察については、どこでもリウマチ医がいるわけではないようで、

診断がきちんと可能なリウマチ医に出会うのは、いまだに限られた都市部のみのようです。まあ、リウマチやSpAのゆっくりとしたやつなら別にいいのですが、SLEのきついやつやAPS、皮膚筋炎、リンパ腫との境界領域などでは、さすがに笑えないようです。

 

Wienから列車で1時間半以上かかる田舎から、若いSLE/APSの患者が、体調不良で慌てて電話してきて、近くに行かずに直接AKHに入院したのは印象的でした。

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リウマチ医にとってのリウマチ診療について

 

前述のようにリウマチ医は実際には充足していないのですが、

この分野においても研究をすることについての理解は得られているようです。

 

患者情報を利用してエビデンスを出すこと、自分の血を提供・診察後採血がOKなこと、組織採取に対する理解という、患者側からの協力は明らかに日本よりも容易に得られます。

 

それだけでなく、結果をだす意味において、人員配置を惜しまない傾向があります。以前にも書きましたが、移民もあるのか、雇用創出のためか人員は正直多いです。

 

一日の新患が10名程度、旧患が15名程度なので、日本なら2名で十分です。

入院は大体15~20名くらい。

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これなら日本なら大学病院でも2名の外来医師と彼らが診察後に入院も診る。

 

ところがこちらでは、外来に4名(患者に医師指名権なし)、入院に医師5~6名で当たります。ところが、rheumatologyには約30名程度の医師と、超音波担当、BIOMETRY担当、看護師がいます。

 

なので、診療している姿を一度も見ていないDrがいっぱいいます。

彼らは何をしているか。。。 研究をしているのです。

 

教授以外は、自分のデスクがある人はほとんどが基礎研究の部門の中にあります。

なのでよくPCとにらめっこしている姿を実験室で見ます。

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とはいえ、実験をしている姿を見たことはほとんどありません。

私がいない時間に一人でやっているか、もしくは結果から論文をまとめるところのみに役割分担をしているのか。 とにかく日本のように一から十までなにまで、自分がしないといけない雰囲気は全く感じません。

 

研究にもPhDやその学生が10名以上います。彼らは実験のプロです。

いっぱい手技を教わっています。

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リウマチ医にとっては、

一般診療は少なくてもAKHのような巨大組織では、診療よりもデータ収集の意味合いが強く、日本の3~4倍専門職種に助けられて、金銭的にも余裕をもって行うことができます。

 

さらに一日の半分程度は、自分の研究に時間を割くことができます。実際の手技などについてはそれも専門職種がいるので、ずっと手を動かす必要のあるものではなさそうです。 ましてや土日は基本的にフリー。

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論文という結果を出しさえすれば、比較的生きやすい。日本よりは恵まれた環境にいることだけは間違いありません。しかしもちろん苦労もしています。

若い医師などは日本と同様に搾取にあっています。でも上がっていけばだんだん自分の時間が取れるようになる。

 

www.orthopaedicrheumatologist.com

 

そういう意味でも結果を出すためにみんな時間を使っています。

あるものは基礎研究、あるものは臨床研究、、、、

 

私は8時や9時まで研修のみで残っていないのでわかりませんが、

こちらではDrは残っているのでしょうか?

日本では8時9時に帰ったら、早いな(仕事してる?)といわれます。

 

 

くわばらくわばら・・・

 

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システムの違い

 

システムの違いも書いてきました。

 

www.orthopaedicrheumatologist.com

 

 

 

www.orthopaedicrheumatologist.com

 

 

最終的に、2年前に電子カルテに移行したというAKHのリウマチ科ですが、はじめは私は日本の電子カルテの悪い部分の反面として、紙カルテの良さに目を奪われていました。しかし、今はどっちでもいいと思っています。

こちらの電子カルテといいますが、日本のようにすべてが電子化されているわけではないのです。むしろ紙カルテをPDFにして取り込んでいるだけ・・・・・

 クリックすると新しいウィンドウで開きます

 

採血は紙ベースのPDFを探してみる。。

投薬は手書きなので、毎回書き直さないと残らない。当然縦断的にシステムとしてみることができないので、いつからどういう理由で変わったかがわからない。

 

オーストリアのシステムで良いところと確実に言えるのは、当日の診察カルテを印刷して本人に渡すことです。

日本のように患者が自分に都合の悪いことが起きたとき、カルテ開示を求めるようなことはありません。医師を疑ってかかるという意識は日本特有です。

 

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 社会保険システムについては、

正直もう少し情報が欲しいです。

報酬が何に基づいて支払われるのか?なぜ他のところで受けた検査でも結果をそのまま書いてるままに受け付けるのか?なぜ検査本体を見ないで、サマリーだけで診療が進められるのか?など  おそらく金銭に絡む問題があると思っています。

 

これらはなかなか聞きにくいことなので、これからの課題でしょうか?

 

もう一つは論文のAuthorshipについても聞きたいと思っています。

常々日本のえらいさんの便乗して知らん顔がへきへきとしています。

 

働かざる者食うべからず。

貢献無き者載るべからず。 

 

はたしてこの国では公平なAuthorshipがとられているのでしょうか?

論文への圧力は日本以上に感じるので、興味が尽きません。笑

 

では。