リウマチ外科医の徒然草

より良く生きるための抜け穴探しのゆる~いブログ

関節リウマチ再発時の投薬はどうするのがベストなのか? 超早期の対処法

2003年が、日本で初めてリウマチに対する生物学的製剤が承認・発売された年、つまり維新元年とすれば、今年は15周年になります。

 

 

発売当初は、免疫抑制効果のあまりの高さに、副作用を定点でモニタリングする目的も含めて全例調査が義務付けられていました。田辺三菱製薬のレミケード部などはその前の治験のころも含めると、20年を超える活動の歴史があるでしょう。私は詳しくは知りませんが、革新的な分野であったため、苦労も多かったと思われます。

f:id:orthopaedicrheumatologist:20180627123618j:plain

 

そして時代はかわりました。

<広告>

 

 

 

生物学的製剤から寛解が当たり前の時代に

 

レミケードの登場時のインパクトは衝撃でした。その当時のMTX容量が8㎎まででしたので、今でいう中等度疾患活動性の患者でも、寛解を得ることが事実上難しかったという時代でした。

 

それが、生物学的製剤を導入すると、早ければ翌日には・・・寛解に。

 

患者は、あまりの変化にびっくりすることも多かったです。

そして、生物学的製剤複数時代から、T2Tの時代へと変わっていきます。MTXも16㎎まで使えるようになりました。

 

 

現在の実臨床では、MTXさえ使えれば、新規発症患者の70%以上が通常の投薬で寛解でき、残る患者もほぼ生物学的製剤ので寛解します。 

 

何らかの合併症があることで、じゅうぶんな薬物療法に制限がかかる人のみ、以前のような経験に基づいた治療が必要になります。

 

f:id:orthopaedicrheumatologist:20180627134317p:plain

 

きちんと治療を行える医師にあたりさえすれば、90%以上の確率で寛解を得られるようになったということが言えるのです。

 

<広告>

 

 

 

それにともなう新たな課題

 

しかし、ものごとには両面がつきもので、新たな課題がやってきます。

 

1、診療医師間の格差の問題

これは言うまでもありません。専門知識の必要量が飛躍的に増したため、一般内科、一般整形外科では対処が難しくなってきたことがあげられます。

 

したがって、一線にいる専門医は都市部にいることが多い(自己研鑽の機会も必然的に多く与えられる)ため、郊外や田舎の病院では、旧型の専門医の診療がメインであり続けます。

 

この問題は10年前から顕在化してきており、いまだ解決に至っていません。

オーストリアでもそうでした。

 

2、寛解してドラッグホリデーを迎えた後の世界は未知である

 

ここが本日のメインの議題です。

<広告>

 

 

 

ドラッグホリデーとは

 

 

 寛解を得た患者では、生物学的製剤は高額ですし、MTXも安全であるとは言えない薬なので、できれば減量、中止したいのが本音です。

 

実際”深い”寛解を得られた患者では、RFやIgGなどの免疫関連抗体は低下していき、正常化します。ゆっくりと投薬量を減量していくと、一部の患者では、

 

「全ての薬剤を中止できることがまれにある」のです。

 

 

レミケードをもちいたRRRスタディーというのがあります。

寛解を6ヵ月維持できた後にレミケードを中止しても、約半数でそのままレミケードを使用しなくてもよくなる。

 

バイオ中止に関する初めてのエビデンスでした。

<広告>

 

 

 

逆説的には、約半数は再発するということをさします。

どのような人が再発しにくいのか?というサブ解析から、

”深い”寛解が必要であるということがわかってきました。

 

 

とうぜんですよね。レミケードを用いて押さえていた免疫が、なくてもバランスをとれるようになるには、免疫のアンバランスが再構築しなおされないといけない。

レミケードで、サイトカインを抑えているだけでは投薬をやめられないのです。

 

 

この話題は、もっと最新の免疫再構築症候群の話をする機会があれば、もっと大事なことがあるので述べようと思います。

 

しかし、今回はドラッグホリデー。

 

この概念は、田中教授が、たとえ1年でもバイオをやめられたら、十分意味があると。

これが「ドラッグホリデー」だとしていました。

 

 

しかし、現在は真のホリデーは、すべての薬剤を辞められることを指すと思っています。実現可能なレベルに来ていますので。

<広告>

 

 

 

 

ドラッグホリデー後はどうなるのか?

 

私は、外来通院の卒業を患者に告げるとき、こう言っています。

「何年かして、再発することは十分にあり得ます。なぜならば、免疫応答のスイッチはあなたの場合はいってしまっていて(ACPA発生のことね)、その結果これまでのリウマチの発症をしていたわけです。現在薬をやめても完全に症状が出なくなりましたが、免疫の記憶は残ります。ゆえに今後再発の可能性は避けられません」

 

ただし、再発した際に本人が発症に非常に早く気がつくことができるため、次の発症は軽症に抑えられる可能性があります。自覚症状が出たら、早めにさいしんするようにしてください。

 

 

そういって、多くの患者を卒業させてきました。

 

 

 

ここ1年で、何人か戻ってきています。

痛みが出た段階で、採血でほぼ正常でも本人は気がついて受診されるのです。

 

ドラッグホリデーというか、完全に夏休みみたいです (笑)

 <広告>

 

 

 

 

新たな課題です。

このように免疫が初発時と違う状態で再診する方には、どのように対処するのが良いのでしょうか?もちろんエビデンスはありません。

 

f:id:orthopaedicrheumatologist:20180627134746j:plain

 

これらの方の特徴を書きます。

1、免疫学的異常はないか、あっても軽度

ACPAが陽性やRFが低値陽性であったりします。CRPなどはもちろん低いか、院生のため、現症と免疫学的症状が連関していない可能性があります。

2、病院に来たら腫れや痛みはまし

えてして受診時には症状が軽快しているのです。腫れていればエコーなどもできます。

3、ほぼほぼ単関節罹患からあっても2か所

ふとんを干したら手関節が痛くなったなど、歴があることがあります

外傷に伴う症状なのかの鑑別能力が必要になります。

4、ACR/EULAR 2010はもちろん満たさない

当然ながら、再発としても発症超早期です。基準を満たすことはありませんので、役に立ちません。カンの世界です。

 

 

 

したがって、リウマチ医にできることが診療開始・もしくは観察継続だけですので、いかに免疫学的異常をいかに把握するかです。

勝負はそこです。

<広告>

 

 

 

 

私はCRPなどの上昇よりも免疫学的異常の有無に力点を置いてみています。再構築された免疫がいかなる状態なのか、症例を集める価値はありそうですね。

 

超早期なら、SASPなどでも効果がありそうです。マクロファージ経由の経路を抑える。超早期ならではの発想ですね。

 

ここの理由付けは、ここではまだ明らかにできませんので、ご容赦お願いします。

では。