先日、関節リウマチ患者におけるサルコペニアの知識整理という記事を書きました。
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記事内では、初歩の話だけ書かせていただきました。
今回はマニアの人向けかもしれません。
慢性炎症における病態
関節リウマチに限らず、COPDや慢性腎不全、アルコール中毒などの全身性の疾患においては、慢性の炎症がおこっています。
これに対する生体の防御機構として、内因性にコルチコステロイドが、また治療として外因性にもコルチコステロイドが使用されます。
ステロイドは6つくらいの経路を介して、タンパク分解に働きます。
詳しく知りたい人は、論文をご覧ください。
また、IGF-1を介したアミノ酸(特にロイシン)の合成プロセスを阻害します。
つまりステロイドによって、筋線維は減少する方向に働きます。
また、炎症性サイトカインも問題です。
TNF-αは、TRAF/IKKを介して、NF-κBを促進します。
またIL-6を含むファミリーサイトカインは、古典的にはGP-130の助けを借りて、細胞内へJAK/STAT経路からタンパク分解へ働きます。
炎症によってユビキチンプロセスなどのタンパク分解プロセスにたどり着きます。
筋肉における反応
しかし筋肉においては、少し状況は異なるようです。
ステロイドそのものは仕方がありませんが、IL-6には少し違う働きがあります。
IL-6は筋肉からも分泌されるのです。
しかも、通常の血清中濃度の100倍にも及ぶ局所濃度になるようです。
その場合、TNFやIL-1Bといった炎症性サイトカインを抑制する働きと、局所における筋線維の再生を促すようです。
そう、IL-6は最も初めに同定された筋肉が分泌するサイトカイン
そう「マイオカインMyokine」です。
この別の経路はMAPKとp53を介して、実はタンパク合成にかかわるのです。
マイオカインの未来
マイオカインは無数に存在して、その相互作用はいまだ不明です。
実際に一度に352個報告した人もいます。
しかし、効率よく低負荷の運動から局所のマイオカインを出すことができれば、筋線維の合成に働くことも可能な日が来るかもしれません。
このことは、関節リウマチ治療において最大の難点である、
サルコペニア肥満+関節破壊というドン付きともいえる病態にも対抗しうる治療になるかもしれません。
また、現在進んでいるマイオカインの一つのMyostatinの抗体の治験・知見が進めば、より効率的な運動負荷をかけることができるようになるかもしれません。
つまり、楽してダイエット笑