管理人です。大型連休は休みなようで、実は結構忙しい。
皆さんそんな感じではないでしょうか?
私もご多分に漏れず同様で、家族の行事や面倒見に丸まる日を取られていました。
更新をさぼってしまいました。
今日はリウマチの手術を久々にしました。
MP関節のSLFJ(self-locking finger joint system)の脱臼症例に対する再置換でした。
初回手術から長期間経過してからの脱臼症例であり、その点ではこの機種の最も問題になる側副靭帯をいかに温存して安定した人工関節置換をするかという、初期エラーにつながる話とは根本的に異なります。
ではなぜ脱臼したのか?が問題なりますし、それを解決することが再置換術の最も大事な中身になります。


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この症例の問題点
示指がローテーションしています。
基節骨基部から回転しつつ、尺側にシフトしています。よく見ると中指もやや尺側にひかれています。前回手術では、伸筋腱の中央化術は当然のように行われていますが、腱固定術や尺側内在筋切離は行われていませんでした。
この症例は、投薬管理が膠原病内科によって行われている方でした。
ヒュミラ🄬を使用して以来、CDAI的には寛解を維持しているということでしたが、よくよく触診をすると、どうもMP関節に軽度熱感を残していました。
当然、寛解症例としての扱いを受けます。
そう、近未来のリウマチ診療である関節機能の最大化を目指した治療を行ったわけです。すなわち、整形外科的には、表面置換型の人工関節と可能な限りの軟部組織温存術を併用する。もちろんもっと早い時期であれば、人工関節自体もいらなかった可能性もあります。
何が言いたいかというと、尺側とはいえ、片方の内在筋を切離することで、必ず伸展力と屈曲力の損失が起きるので、できることならば筋腱切離を行わないように手術するのがベストである。そしてそれを達成するためにはどのようなストラテジーが必要か考える。
これがリウマチ外科医の矜持です。
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骨切りと軟部組織のリバランスのみでの限界
そうして臨んだ初回手術でした。
術後〇か月はよかったのですが、知らないうちに、そして本人も自覚ないままに脱臼。
そう、原因は
- CDAIでは評価されない程度の疾患活動性の残存
- 尺側偏位の進行
- 前回術時の先進的試み
これらが複合しておきてしまったのでしょう。
もちろん、これらは推察ですので、本当のところはわかりません。
でもこれらの現在の診療技術の限界を超える問題についても、考えを巡らせておくことが、これらの残念な経験から糧を得て、未来を拓く自分たちの責任ではないかと愚考しております。
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今後の試みについて
先進的試みですが、完全には間違ってはいなかったと思います。
ただ、まだ多くの問題点が残っていて、完全遂行はまだ先ということだけは明らかといえます。
今回は尺側偏位の進行によるケースのため、腱間結合の切離、尺側内在筋腱の切離、腱固定術を全てやりました。これらを施行することで術後の結果は安全になりますが、同時に身体的なの損失は確定します。
現在するということが何となく決まっているという手技を、それだけですべてそのままに追加施行するというのだけは避けたかったのですが。。。
まだまだ未熟です。
CDAIの感度問題では、もう一度内在筋腱の位置をエコーなどで特定できないかという問題に突き当たってみたいと思います。
本症例でも侍史の腱は、高緊張でかつ、掌側に偏位していました。あまりに固く、背側へのrepositionを試みることさえできませんでした。
なのに、切離すると、生じるギャップはたった1センチ程度。内在筋腱を延長する方法はないものでしょうか??
また先日書いたように、
www.orthopaedicrheumatologist.com
MPJ亜脱臼の問題にもメスを入れたいと思います。
また上司は腱固定をどの指にしたらいいか。
つまりEIPとEDMの扱いをどうするのがベターなのか?それについても疑問を呈していました。
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このように、まだまだ未開の地で、もっと高い機能再建のためには、たくさんの知見が必要です。
国は数年で結果をでて実用化するというものしか、研究資金を提供しないという、余力のないことをしていますが、このようなすぐではないけれども未来への投資にはお金をケチらないでほしいなと心から思います。
では。