リウマチ外科医の徒然草

より良く生きるための抜け穴探しのゆる~いブログ

最近の尺側偏位矯正手術のあれこれTipsを詰め込んでみた(備忘録再開)

管理人です。

 

ここのところあまりにも多忙で、更新できていませんでした。

忙しいとはまさに、字のごとく。

心がないので、何も考えていないのです。思索を巡らせることができないのです。

 

「書くことがないっ!」 

 

思い切って休むとともに、

原点に戻って、リウマチ外科らしい備忘録をすることにしました。

 

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最近の手術のはやり

 

管理人は基本的にハンドサージャンです。

細かい処置を丁寧に時間をかけてでもする。安全性重視でやっています

 

 

最近のはやりですが、尺側偏位をいかに治すかに凝っています。

 

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こんな手をいかに機能的にするか。それを考える日々です。

 

 

この右手は、患者さんはそれなりに使っておられます。尺側偏位そのものは痛みも何もないので、使えない、力が入らない代わりに、何となくもう片方の手で生活を送れるため、結構ほったらかしにされてしまいがちです。

 

 

でもほったらかし過ぎると、ひどいことになります。

掌がなくなるんです(笑)

 

 

 

少しわかりにくいですね。掌が隠れてしまうのです。

いい写真が手元にないので、たとえて言うなら後骨間神経麻痺の手のような。

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この手を治すには病態理解が大事

 

 

尺側偏位についてはこれまでも何回か書いてきました。

変形矯正がとても難しい。

 

www.orthopaedicrheumatologist.com

 

 

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最近は基節骨の基部の持ち上げ伸筋腱の中央化に凝っています。

そして残念ながら今でも解決しないのが、屈筋腱の偏位です。

 

・基節骨基部の持ち上げ

 

手術をすればわかるのですが、多くの症例、とくに中指でMP関節が掌側に亜脱臼もしくは脱臼しているのです。

脱臼した場合は、内在筋の短縮が問題となりますし、亜脱臼の際には、基節骨基部関節面の背側半分が削れてなくなっているのが問題になります。

 

それに加えて、どうも掌側関節包の骨への癒着もきついような気がします。最近同僚医師と話していたのですが、側索の延長部位から基節骨にそのまま骨膜までまっすぐに到達し、骨膜下に剥離を掌側まで進めていく。そうすると、確かに基節骨が遠位に少し動くようになります。

 

これまではこの癒着は、人工関節をする際にしか処置をしていませんでした。というのも、骨切除をしないと内側から関節包を触ることができなかったからです。しかも中手骨側のみ処置することが多かったため、実際に人工関節を挿入、整復をするときに、掌側への軟部組織から受ける牽引力が阻害因子として働き、人工関節の易脱臼性につながっていました。

 

正直過去のスワンソンインプラントを用いたん手術で、術後早期にインプラントがだってンしてしまっていた症例もありました。

そこから生まれたTipsです。基節骨基部を側索からはがす。可能なら橈側尺側両方とも。せめて尺側だけでも。

 

この操作で、基部を背側に動かすことができるようになります。

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ところが、大事なのはここからもあります。

 

基節骨の落ち込みを戻して維持する方法が難しいのです。

これまでは、関節包背側をWood法に準じてコの字に切開し、縫縮を行っていました。しかしそもそも関節包背側は紙のようにペラペラで、むしろ伸筋支帯と癒着していることがほとんどです。癒着をはがしたら、大概破れます。

 

 

本当にWood法で亜脱臼を整復維持できるのか??

 

 

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ここでも触れています。

MP関節を術後屈曲しただけで、関節包は破れているとしか思えません。

これを解決することを目的として、われわれは以前から伸筋腱を半裁し、側索にループ状にかけて、側索ごと基節骨基部を持ち上げようとしてきました。

 

この方法も絶妙のバランスの時には悪くなかったのですが、弱点もいくつもありました。伸筋腱中央化をする方法が伸筋支帯の縫縮しかなくなる。つまり、伸筋腱の尺側脱臼再発に弱くなるということです。また、側索の方が緊張が強いので、持ちあがるどころか、伸筋腱を尺側にひいてしまうこともよくありました。

 

なので、

私は好んでアンカーを用いた腱固定を行っています。

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使用するのは、将来の人工関節置換を考慮して、糸性のアンカーです。

 

もともと伸筋腱中央索は基節骨基部に荒く固定されています。それによりてこが効いて指伸展時に基節骨基部を持ち上げる力を発揮します。

 

ところが尺側偏位では、伸筋腱自体が縮むのに、中手骨頭から見て基節骨基部は掌側に移動するので、腱は長く必要になります。遠位に引き出されるといいますか。

完全脱臼の症例でも、基節骨への付着部は保たれているため、伸筋腱が捲れこんでいるのを目にすることがあります。

 

 

 

伸筋腱が引き出された位置で拘縮しているため、さらに現在よりも近位に停止部を移動しないと持ち上げ効果が得られません。いわゆる腱のAdvanceの量の決定が難しい問題です。

 

 

あまり前進しすぎると、持ち上げ効果は大きくなるのですが、伸筋腱がヒンジになってしまって、屈曲時に基節骨が骨頭のまわりを円運動できなくなります。

あまりに少ないと持ち上げ量が足りないため、簡単に亜脱臼をおこします。

 

 

腱延長量の設定は難しいのです。宮大工の世界です。

 

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最近は、指を屈曲し、さらに腱を環指でつまみ出して、滑走できる距離を調べて、最大屈曲・けん引時に基節骨基部に届くところを目安に腱固定を行っています。

 

脱力した状態ではNeutral Positionを得られるように。