リウマチ外科医の徒然草

より良く生きるための抜け穴探しのゆる~いブログ

関節内注射はやっぱりブラインドじゃなきゃダメ ープロとしての矜持を大事にしようー

管理人です。

 

最近、勤め先の特殊性が大きく影響しているのだと思われ、

関節炎の原因診断に苦慮するような症例ばかり見ているような気がします。

 

 

例えば一例を紹介します。

 

・以前に膝が腫れていて、他の医師により腫脹している部位を、「軟部腫瘍」として切除を受けていた方が、同部位が再び腫脹、水腫をきたしたとのことで、腫瘍外科医から依頼された。

 

・昔交通事故で股関節の骨折歴があり、20年の時を経て同股関節の外傷後変形性関節症にいたった。人工関節が計画されたが、術前検査で、恒常的にCRPが高いことが判明し、同時期から反対側の足関節に腫脹を認めるようになった。股関節外科医から診察を依頼された。

 

・キーンベック病の症例に対して手外科医が手術を予定したが、術前のMRIで手関節の滑膜腫脹が手関節全体、尺側手根伸筋腱部まで広がっていることがわかり、鑑別疾患を依頼された。

 

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正確には、自科からのコンサルテーションですが(笑)

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このような、単関節炎の原因を特定するのは実はものすごく難しいのです。

 

2010ACR/EULARcriteria

誰もが今や知っている診断基準。

これはリウマチを診断するためのツールです。

 

スコアリングで6点以上であれば、リウマチとして分類すると。

でもスコアの前に、「リウマチ医によって他の疾患が除外できる」という条項があります。すなわち、典型例ならともかく、他の関節炎の除外ができるほどの経験を要するということです。

 

整形外科医の皆さん、サルコイドーシスによる関節炎って見たことありますか?

私も少ないです。

 

そしてこのツールには、大事なもう一つの表が載っています。

それを改変して載せます。 改変したオリジナルです。

 

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実は診断ってものすごく難しいんです。

 

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先ほどの症例たちはどうやって診断するのか?

 

問題の症例たちです。

他の疾患の存在が判明していれば、鑑別は一気に簡易になります。

 

 

でも残念ながら、はっきりとしている既往はありませんでした。

 

 

どの症例もseronegativeかlow titer seropositiveでした。

そして少関節罹患

 

 

 

 

www.orthopaedicrheumatologist.com

 

前にも難渋した症例について述べています。

 

中には滑膜切除をして病理検査までした症例もありました。

 

 

www.orthopaedicrheumatologist.com

 

 

これらでわかる通り、診断は困難なのです。

 

グラフでも、まさに診断困難! の部分ですね。

 

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最終手段は病理だけど、病理は切り札にはならない

 

 

病理では、炎症浸潤細胞の量と、白血球のプロポーションくらいしかわかりません。

ましてや何による滑膜炎かははっきり知ることができません。

 

そこで有効なのが、関節内注射です。

特に単関節罹患の時に有用です。

 

 

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関節内にステロイドを注射します。

施行前に感染症の除外は必要ですが。

 

a0296269_09130460.png部位はいろいろと選べます。

 

 

内科の先生方からすると、膝と肩が有名ですがこれらの部位は通常のOAでも炎症が起きるので、診断目的に注射のまえに、水腫を抜くとか、他の方法ができます。

 

最も有用なのは、他の関節です。

たとえば、足関節、手関節、肘関節、手指関節、後脛骨筋腱鞘。

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炎症を伴った滑膜炎があれば、使用するステロイドの薬剤の効果に合わせて、炎症が引き、そしてその後きっちり再燃します。

 

そのサイクルによって、慢性炎症の存在を確認するのです。

SpAやSLEなどに伴う滑膜炎ではあまり聞きません。

ただ、ASによる仙腸関節の炎症には、関節内注射は著効すると、この間学会で話したドイツ人が言っていました。

 

 

薬効に合わせた、症状の変化を確認することで、RAか否かを類推する。

それが、リウマチ医(整形外科系)の真骨頂です。

 

 

 

そして、先日自分の後輩に関節内注射ー足関節を横で私が監督しながら、実際にさせてあげることができました。

 

若い大学院生なので、足関節に注射などは初めての経験であったようです。

「注射させてあげるからついてこい」と告げると、一周戸惑いの表情をしたのち、彼はこういいました。

 

「エコーガイド」ですか?

 

エコーガイド下穿刺なんて、片腹痛い。軟部組織で、位置が容易に変わるものであればもちろんエコーは有用ですが、関節の位置は動きません。

 

膝と同様に、ブラインドでできて当然です。それが矜持です。

 

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彼に、口頭で狙いと位置を教え、いつも見ているレントゲン増から、関節列劇を想像して確実に関節内に打つよう指示しました。

 

 

そして、本番。

 

大学院生は、針先を2回変えましたが、きっちりとやり遂げました。抵抗なく関節内に薬液が入っていきます。

 

でかした。それでこそ整形外科医だ。

 

 

今後も、後進の育成にも頑張ります。

 

では。