管理人です。
今日は、仕事上のトラブルもしくは越えるべき関門に出くわした際、有効な対策が見つからなかった時にどうするのかというお話です。
横浜で第92回日本整形外科学会が開催されています。
主幹が札幌医大なのに、会場がパシフィコ横浜なんて、はっきり言うと損した気分ですが、最近は会場が東京、横浜、神戸くらいしかなくなってきてしまいました。
参加者数が多すぎて、宿泊と会場数を確保できる開催地に限りがあるとの理由のようです。一昨年の仙台は、むしろ震災復興の意味合いの方が強かったでしょうか? テント会場が暑くて、はっきり言って地獄絵図でした。(ポスターもE-posterでしたので、省スペースに行われました。)
先月から学会続きで、正直もう疲れたわ…なのですが、演題が通ってしまっているので、発表しないわけにはいきません。
行ってきました。
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解決の答えは自分の分野にはふつうない
学会というのは、学会自体のレベルの問題もありますが、本来その世界で最先端のもしくはまだ危うい結果を議論する場です。
未確立の技術を、”批判的な目”をもって討議しあい、より良くする場とも言えます。論文におけるpeer reviewなどと同じ役割です。
小生の抱えている症例の問題点があります。
人工指関節の再置換術を必要とする症例があるのです。
以前に書いたとおり、可能な限り表面置換型人工関節を使用しています。
www.orthopaedicrheumatologist.com
この人工関節は、アンカー部分(金属部分)の固定性が非常に良いことが特徴で、ソケットの2/3程度が骨組織に覆われていれば、あとは脚の開大による支持で長期の固定性を得ることができます。
解剖学的形状をしていることから、理論的にはもとの指と同じような関節運動が得られるという点で、他の表面置換型と同様にある意味関節機能温存を目指せます。
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問題点は安定性で、脱臼を生じる症例がしばしばあるということなのです。
ちなみに、シリコンインプラントでも、脱臼や破損は7年くらいで2/3にみられるという点は覚えておかないといけません。
今回、小生も脱臼症例を経験してしまいました。
しかも一度脱臼して、すでに再置換術を行ったにもかかわらず再脱臼してしまったのです。通常の伸展サイド(伸筋腱など)によるバランス獲得手技はすべて行ったのですが、、、、 術後半年でじわじわと脱臼。。。
正直ベストと思われる治療と後療法をしていたのにショックでした。
なので、自分の分野の論文、教科書などを調べつくしましたが、次の置換術において気をつけるべきことや方法など、一切ヒントになるものはありませんでした。
勝算をあまり持てない中での再置換になってしまいます。
途方に暮れていました。
どうやって、軟部のリバランスを行ったらいいのだろう?屈曲サイドの過緊張をどうやって緩めるなり、尺側偏位の影響を減らしたらよいのだろうか?
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ふと別件で立ち寄った前腕のセッション
前腕で上腕遠位の変形癒合と陳旧性モンテジア骨折が話題になっていました。
いかにして骨切りを行って正常なアライメントを再獲得するか。他分野ながら面白く聞かせていただいていました。
その時にふとピンと来たんです。
骨短縮や矯正を行って軟部組織のバランスをとるという点においては、今度行う再置換術にも通ずるところがあるのではないかと。
股関節の骨切りなど、完全に骨に依存するものとは異なり、軟部をリバランスする。
そして、SLFJの再置換の際に一番の問題点となる、追加骨短縮ができない、アンカーを抜去することができないという点の解決策の一つになり得るのではないかと考えました。
近位ステップカット骨切り+短縮術
スクリューで固定すれば、後療法にもあまり影響しません。
また骨切り方法を工夫すれば、回旋矯正も可能です。
通常骨短縮は遠位で行いますが、考えてみれば、背側骨間筋を除けば近位骨切りでも問題ないはずです。
少し勝算が高くなり、自信をもって再置換術に望めます。
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灯台下暗し。全く違う分野よりも、意外に隣の分野くらいに解決策は転がっています。
行き詰まりを感じたら、他の店舗でも同じ問題を抱えていることが多いです。
同業他社はヒントの宝庫。