管理人です。
今日は肘関節の話を。
整形外科医にとっては、人工関節というのは最大の武器です。
現在では、これだけの多部位で実用化、長期成績が望める段階に来ました。
リウマチ外科医としては、全身の関節を相手にするので、これだけ多数の治療の中で、どれだけ多くが自分でできるのかというのが、治療の幅を広げることになりますし、腕の良さを示す指標にもなります。
しかし、現在のリウマチ外科医のなかで、これらすべてを自分でできる人はどれだけいるでしょうか?
最近の分野細分化の影響もあり、通常の関節外科医でもですし、脊椎外科に関しては、通常の骨折すらしなくなってきています。
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人工関節の歴史は膝関節から始まった
世界初の人工関節は、諸説ありますが膝関節の象牙製の人工関節といわれています。
以来、股関節、肩関節を中心に、膝を含めて大関節で進歩を遂げてきました。
材質、安定化機構、バイオメカニクス・・・
新たなコンセプトが追加されて追加されて、現在に至っているわけです。
例えばヒンジ型であったところが、応力集中によるゆるみが見られることから、congruent型に進化したり、コンセプトの進化とともに、機械の進化もしてきました。
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現在の膝関節は、表面置換型を中心に、インプラントのデザイン、ギャップ形成機構、手術用機械の進歩に加え、ついにロボットによる全自動骨切りまで登場しています。
歴史とは、失敗とそれを糧にして進化した歴史です。
膝関節、股関節はシステムが機械を含めてとても進歩しています。
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人工肘関節をして冷や汗をかいた
先日、管理人も人工肘関節をしました。
もともと20年来拘縮をしていた、painful anlylosisの症例です。
ギャップを作るのにとても苦労をしました。
膝関節や股関節でも可動域の悪い症例に対する手術は難しいと思います。それと同様です。
最近のはやりは、上腕三頭筋温存手術ですので、経験は浅いのですが頑張って取り組んでおります。
業界ではtriceps-on approachといいます。
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このアプローチは、術後の可動域訓練において三頭筋のことを全く考えなくてよくなるので、うまくいくととても有利な術式です。
半面、術野が非常に悪いのが問題となります。
いちいち三頭筋の緊張により、肘関節脱臼に抵抗する。
(これは逆に術後の脱臼抵抗性になるので良いことでもあります)
三頭筋の筋腹も上腕サイドのほとんどを覆い隠します。
なので、インプラント接合時にほとんど術野が見えなくなるのです。
私は今回、尺骨インプラントが予定より3ミリ近位設置になってしまいました。
これにより、インプラント接合が困難になったため、三頭筋を一部いったん切離して再建せざるを得なくなりました。
きっちりと再建できたので、従来のcanvelアプローチよりは格段に良いのですが、残念な気持ちが残りました。
術後成績も申し分なく、屈曲135度伸展-15度 excellentなのですが。(汗)
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THAやTKAならこのトラブルは0秒でシステムが解決する
翻って、既存のインプラントに合わせて考えると。。。
THAであったなら、ネックを-3ミリにする。とか、インプラントの選択で全く悩むことなく解決するんですよね。
TKAなら、インサート圧を変えるということで、ギャップは大丈夫になるんですよね。
人工肘関節は、ギャップセオリーが必要な割に、それを調整するプラス骨切りシステムや、インプラント挿入補助システム、回旋防止システムなど、進歩したTHA/TKAシステムに比べて、はるかに後れを取っています。
そのため、今でもTEAは一部の医師にしか行われない、玄人専用手術になっています。
手術を受ける機会自体がない都道府県もあると聞いています。。。
新規インプラントの開発もいいのですが、インプラントメーカーには、手術をより安定的にしてすそ野を広げる機器開発にも力を注いでほしいものです。
では。