リウマチ外科医の徒然草

より良く生きるための抜け穴探しのゆる~いブログ

機能障害は、10%程度の方しか治してもらえなくなる?

日手会@名古屋を切り上げて帰宅の途上の管理人です。

 

リウマチ手の未来について、学会に参加していろいろ考えさせられました。

 

何よりも薬物療法が成熟しました。

先日の投稿の通り、EULAR recommendation 2016が改訂され、新しい患者層に関してはほとんどで抑えが効きます。

www.ncbi.nlm.nih.gov

同僚のリウマチ内科とも話しましたが、整形外科は合併症を治療できないのに、途中まで診ておいてトラブルが起きたら紹介されるのは我慢ならないようです。

 

今後もこの論調は、より強まるでしょう。

むしろ、リウマチは内科の疾患ということが明確になると思われます。

 

Treat to Targetを厳格に順守する(先日Smolenはadhere to T2Tといいました)ことで、未来が開けるといっています。 確かにそうでしょう。

 

非リウマチ医でも診断がある程度可能になり、生物学的製剤もガチの人でなくても容易に使用できる時代になりました。

f:id:orthopaedicrheumatologist:20170501094725j:plain容易に使用できる薬剤の一つ

それでも依然として診断がきちんとつけられ、きちんと治療が行われている患者は70%です。

一方、リウマチの手足の治療がきちんと診断・治療できる医師は、整形外科のうちのおそらく5%以下です。

 

学会では、関節温存に関するセッションがありました。「どこまで関節温存ができるか?」と題されたセッションです。

 

関節温存には、内在筋腱の痙縮の程度、走行、矢状索のゆるみ、関節の脱臼の評価など、枚挙にいとまがないほどの病態像の理解が欠かせません。

 

ましてや、スワンネック変形やボタン穴変形の病態像を正確に理解している人間は、日本整形外科学会会員 約15000人のうち、100人に満たないでしょう。

 

今後リウマチ外科医はどんどん絶滅に向かいます。

高度の機能障害に対する治療を受けられる人は、人口の約0.5%とか、700,000人と言われるリウマチ患者さんのうち、どれれくらいになるでしょうか?

 

 

キーンベック病の最良の治療法は?

管理人はリウマチ手外科を専門としていますので、今の立場では治療を行うことのないキーンベック病です。ただ、私は手外科学会専門医ですので、状況によっては見るようになることもあるかもと思って勉強しました。

 

 手関節内の月状骨(げつじょうこつ)に特有な硬化像や圧壊(あっかい)像を示す骨壊死(こつえし)をキーンベック病、または月状骨軟化症(げつじょうこつなんかしょう)と呼びます。1910年、キーンベックの報告以来、この名前がつきました。
 20代の男性に発症することが多く、また工員、大工、農漁業など手をよく使う人に多く発症します。

 

f:id:orthopaedicrheumatologist:20170429212500j:plain月状骨の低信号域

 

原因は種々言われていますが、どれと言って明確になってきているものはありません。

ただ、静脈のうっ滞が原因となるのではないかというspeculationは固まってきたようです。

 

さて、今回の学会のテーマは、血管柄付き骨移植術は必要か?

でした。尺骨マイナスの症例に多く発症することが多いので、ゴールデンスタンダードは橈骨短縮術です。つまり病因そのものの治療ではありません。

また、血管柄付き骨移植術も壊死なので有効そうに見えますが、直接的な効果は期待できません。

 

北海道の先生は、橈骨短縮のみでほとんどの症例は対処ができ、不可能な症例はもはやsalvageせざるを得ないという論理でした。対する京都の先生は、血管柄付き骨移植は圧壊した月状骨の高さを回復し、手根骨の動きを回復するという論理でした。もちろん橈骨短縮は行ったうえでとのことでした。

 

橈骨短縮術はやはりスタンダードのようです。また、圧壊した月状骨でも骨癒合してさえいればそこそこ機能が保たれるようです。

私もある程度血管柄付きを行いましたが、移植骨が心もとないという印象と、術後の可動域訓練がしにくいのが気になります。

 

会場では、

血管柄付き骨移植の支持はEVENの結果でした。

 

私は橈骨短縮のみを支持します。

やっぱり同じなら侵襲の少ない方がよいかと。

 

#キーンベック病#橈骨短縮骨切り術#血管柄付き骨移植#どっちでもいい#日手会ディベート

医師が留学するために一番大事なこと

第60回日本手外科学会で面白いシンポジウムがありました。

 

「留学のススメ」と題された、若手の先生方の留学経験のセッションでした。

 

半年から最大5年までの期間、アメリカ、ヨーロッパ、台湾などあやゆる有名どころに行かれている先生方の経験で、貴重な意見を聞く機会になりました。

 

どの先生もおっしゃられるのが、

最先端に触れる機会、物事を大局的にみる機会、新しい人間関係を作る機会、しんどかったでもいい経験であったと言ってはりました。失った金銭的な面を上回る今の自分を形づくるほどのメリットがあったとのことです。

また、家族に対しても大きな影響があったとのことです。

 

しかし同時にこう強調してました。

お客さんではなく、本当に真剣に取り組むことで心を開いてスタッフとして扱ってくれるようになる。

何事も、自分の在り方次第ですね。

 

私も、オーストリア留学を控えています。

3ヵ月と非常に短い期間ですけども、自分を変えられる貴重な機会になるのではないかと心がワクワクしています。

無犯罪証明書のことなど、手続きにはいまだに悩まされていますが、それに負けずに精一杯生かせるように頑張りたいと思いました。

ここまで知れば80% modified Littler法とは?

おはようございます。2週連戦の第二試合です

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今日は朝早くからのセッションだったので、

以前から気になっていたmodified Littler法の報告を聞きに行きました。

 

スワンネック変形のPIP関節の過伸展を制動する方法で、

指の斜指靭帯(oblique retinacular ligament)を再建する方法です。

 

背側のJ字状の皮切を行い、背側でlateral band mobilizationを行います。

尺側の側索(結構掌側を走っている)をMP関節遠位で切離し、反転、屈筋腱鞘の下を通してから、橈側の基節骨にアンカーの使用もしくは橈側の側索に縫合します。

腱の下を通すときに神経血管束に注意が必要です。

 

術後はlateral band mobilizationの効果を出すため、術後2週ワイヤー固定を行います。夜間のスプリントも過伸展防止に使用します。

縫合強度が強すぎると、ボタン穴変形の発生もあるため、20~30度くらいの屈曲位での縫合がいまのところ良いようです。

ワイヤー固定も屈曲20度で行います。

 

他の方法としては、FDSを片方使用して行うスリング法も有名です。

しかし、斜指靭帯を再建することから最も生理的ですので、うまく進化すれば煩雑ではありますが、よい方法かなと思います。

 

われわれも、導入してみようかと思います。

MP関節の手術との併用には技術がいるかもしれません。

 

ところで自分の発表も終わりましたので、リラックスして勉強に名古屋飯の探索臨みます。

 

午後のセッションでも、RAのディベートがありました。

何年もリウマチ外科、特に手外科をやってきました。年々ちょっとずつ追いつこうと頑張ってきましたけど、全然どれくらい離れているかわかりませんでした。

ようやく背中が見えてきました。それが一番うれしいです。

 

#日手会#第60回#名古屋飯#modified Littler法#FDS sling#ORL