リウマチ外科医の徒然草

より良く生きるための抜け穴探しのゆる~いブログ

やっぱり人工股関節、人工膝関節はよくできたシステムだと認識した 人工肘関節はまだまだ玄人向きである

管理人です。

今日は肘関節の話を。

 

 

整形外科医にとっては、人工関節というのは最大の武器です。

現在では、これだけの多部位で実用化、長期成績が望める段階に来ました。

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人工関節はこれだけの部位に使われるようになった

 

リウマチ外科医としては、全身の関節を相手にするので、これだけ多数の治療の中で、どれだけ多くが自分でできるのかというのが、治療の幅を広げることになりますし、腕の良さを示す指標にもなります。

 

 

しかし、現在のリウマチ外科医のなかで、これらすべてを自分でできる人はどれだけいるでしょうか?

 

最近の分野細分化の影響もあり、通常の関節外科医でもですし、脊椎外科に関しては、通常の骨折すらしなくなってきています。

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人工関節の歴史は膝関節から始まった

 

世界初の人工関節は、諸説ありますが膝関節の象牙製の人工関節といわれています。

https://www.amdd.jp/technology/aboutmedtech/pdf/07_jinkou.pdf#search='%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%A7%E5%88%9D%E3%82%81%E3%81%A6+%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E9%96%A2%E7%AF%80'

 

以来、股関節、肩関節を中心に、膝を含めて大関節で進歩を遂げてきました。

 

材質、安定化機構、バイオメカニクス・・・

新たなコンセプトが追加されて追加されて、現在に至っているわけです。

 

例えばヒンジ型であったところが、応力集中によるゆるみが見られることから、congruent型に進化したり、コンセプトの進化とともに、機械の進化もしてきました。

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現在の膝関節は、表面置換型を中心に、インプラントのデザイン、ギャップ形成機構、手術用機械の進歩に加え、ついにロボットによる全自動骨切りまで登場しています。

 


最新鋭の膝手術ロボ導入 近大が国内初、人工関節で

 

 

歴史とは、失敗とそれを糧にして進化した歴史です。

 

膝関節、股関節はシステムが機械を含めてとても進歩しています。

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人工肘関節をして冷や汗をかいた

 

先日、管理人も人工肘関節をしました。

 

もともと20年来拘縮をしていた、painful anlylosisの症例です。

ギャップを作るのにとても苦労をしました。

 

膝関節や股関節でも可動域の悪い症例に対する手術は難しいと思います。それと同様です。

人工肘関節|人工関節の広場 -もう一度歩いて行きたい場所がある-

 

最近のはやりは、上腕三頭筋温存手術ですので、経験は浅いのですが頑張って取り組んでおります。

業界ではtriceps-on approachといいます。

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 このアプローチは、術後の可動域訓練において三頭筋のことを全く考えなくてよくなるので、うまくいくととても有利な術式です。

 

半面、術野が非常に悪いのが問題となります。

いちいち三頭筋の緊張により、肘関節脱臼に抵抗する。

(これは逆に術後の脱臼抵抗性になるので良いことでもあります)

 

三頭筋の筋腹も上腕サイドのほとんどを覆い隠します。

なので、インプラント接合時にほとんど術野が見えなくなるのです。

 

 

 

私は今回、尺骨インプラントが予定より3ミリ近位設置になってしまいました。

これにより、インプラント接合が困難になったため、三頭筋を一部いったん切離して再建せざるを得なくなりました。

 

 

 

きっちりと再建できたので、従来のcanvelアプローチよりは格段に良いのですが、残念な気持ちが残りました。

 

術後成績も申し分なく、屈曲135度伸展-15度  excellentなのですが。(汗)

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THAやTKAならこのトラブルは0秒でシステムが解決する

 

翻って、既存のインプラントに合わせて考えると。。。

 

THAであったなら、ネックを-3ミリにする。とか、インプラントの選択で全く悩むことなく解決するんですよね。

TKAなら、インサート圧を変えるということで、ギャップは大丈夫になるんですよね。

 

人工肘関節は、ギャップセオリーが必要な割に、それを調整するプラス骨切りシステムや、インプラント挿入補助システム、回旋防止システムなど、進歩したTHA/TKAシステムに比べて、はるかに後れを取っています。

 

 

そのため、今でもTEAは一部の医師にしか行われない、玄人専用手術になっています。

 

手術を受ける機会自体がない都道府県もあると聞いています。。。

 

 

 

新規インプラントの開発もいいのですが、インプラントメーカーには、手術をより安定的にしてすそ野を広げる機器開発にも力を注いでほしいものです。

 

 

では。

 

 

 

 

 

 

 

リウマチ手関節の手術適応と問題点についての備忘録

管理人です。

たまには本業についての備忘録です。

ポストコロナ時代に自分が残れるかわからない中ですが、まじめな投稿です。

 

まずは手関節から。

 

手関節の関節破壊の病態

 

多くの患者が罹患する好発部位で、初発関節であることも多く、関節破壊の影響が出やすい部位である。

 

橈骨手根関節、手根中央関節、遠位橈尺関節が滑膜関節であり、滑膜炎が継続すると軟骨の損耗や手根骨の破壊を生じる

 

 

橈骨手根関節や手根中央関節に骨性強直(bone ankylosing)を生じると、関節可動域制限が生じる。

 

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これらの病態から、手根骨高が低下し掌背側の橈骨三角骨靭帯などの靭帯の弛緩を生じ、不安定性な手関節が出来上がる。

多くの場合、手根骨は橈骨遠位端の傾斜に従って、尺側、掌側、回外方向に移動する(carpal translation)

 

 

 この手根骨の移動がRAに特徴的な手根骨の掌側脱臼や、手指伸筋腱断裂、長母指屈筋断裂などの代表的かつ重大的な合併症の原因となる。

 

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手術適応は?どうなったらどうする?

 

・手術適応

 十分な薬物療法や関節内注射を行ってもコントロールできない滑膜炎、前述の手根骨脱臼や腱断裂などの合併症、関節破壊による能力障害が適応になる。

またリスクが高い際には、予防的手術も積極的に考慮すべきである。例えば単純X線におけるscalloping signと尺骨頭の背側脱臼は、遠位橈尺関節を原因とした手指伸筋腱断裂のリスク因子である。

 

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・手術術式

 関節破壊を生じる前の薬物療法抵抗性の滑膜炎には、滑膜切除術が施行される。腱鞘滑膜の切除もできる直視下の滑膜切除に加え、靭帯への侵襲が少ない関節鏡下の滑膜切除も有用である。橈骨手根関節だけでなく、手根中央関節や遠位橈尺関節の確認も行わなければいけない。

  しかし、現代の薬物療法の進歩により、事実上滑膜切除を行うことはなくなった。

かわりに内科のDrでも関節腔内注射を行われることが多くなった。

 

 

 破壊が進んだ関節では、手関節の安定性により、橈骨手根関節や遠位橈尺関節に対する手術が組み合わせて行われる。

 安定性評価には、Schulthess分類が最もよく用いられ、Type I(ankylosis type)とType II(osteoarthritis type)が安定型、Type III(disintegration type)が不安定型とされる。

 

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安定型の手関節には、Darrach法(尺骨遠位端切除術)やSauvé-Kapandji法(棚形成術)が用いられる。不安定型の手関節には、前述の術式に橈骨月状骨関節固定(部分手関節固定術)の併用や、手関節全固定術が用いられる。

 

また一般化しているわけではないが、一時的に関節固定を行いのちに解除することで線維性癒合を得ようとする方法や、概念を引きついで骨切りを追加するpalmar shelf osteotomyなどの派生手術も存在する。

 

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手関節の関節可動域減少、とくに掌屈可動域の減少は手指機能に影響するため、可能な限り可動性を残すことが望ましい。

 

一般的には、20-20 の可動域 すなわち40度の可動域を最低限残したいというのが、術者間の常識になっている。

 

 

私は安定型の手関節では機能を重視し、Sauvé-Kapandji法を第一選択としている。一方、不安定型の手関節では機能より安定性を優先すべきと考え、橈骨月状骨関節固定術や三角骨を含めた固定術を行う。術式の選択は、bone stockの量に依存するので、短縮量などを考慮して計画を練るのがよい。

 

 

 

また近年、本邦初の人工手関節が開発され、DARTS人工手関節®として使用可能になった。現状では一定の条件を満たした手外科専門医しか使用できないが、短期では良好な治療成績が報告されている。

 

 

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注意点など大事なことは何?

 

・気を付けておきたいポイント

 手関節の可動域は可能な限り温存することが望ましいが、滑膜切除ために侵襲を加える関節は、最小限がよい

 

手根中央関節は特に、単純X線では関節裂隙が残存しているように見えても損傷を受けていることがある。不用意に滑膜切除を行うと、軟骨下骨の露出が起こり、骨性強直が生じることが少なくない。

 

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これらの注意点を気にしながら手術したら、ちょっとは成績が向上しますかね?

今度はTipsの載った本が欲しいなと思いました。

 

 

コロナ抗体検査を受けてみた。 もし陽性だったらうれしいのか悲しいのか?

管理人です。

 

表題の通り、縁あって職場でのコロナ抗体の検査を受けることができました。

 

結果はまだなのですが、今回の臨床疫学研究として行われた職員に対する抗体検査が、臨床上、管理上どのような意味があるのかを考えてみました。

 

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説明文書に気になる言葉が

 

はじめは、抗体検査を受けられると知って喜んだのですが、説明文書に気になる個所を見つけました。

 

「高濃度陽性の場合、ご自身で産業医に連絡を取ってください」

 

なぜ産業医なのか?

現在の感染や既感染を意味する、、、臨床というよりは管理上の問題のようです。

 

抗体検査について調べてみました。

 

 

 

 

最近は自宅でも抗体検査が受けられる

 

www.gme.co.jp

 

 

開業の先生や、不特定多数の人と接する職業の方は、自分で購入してされている方も多いという話も聞きます。

知り合いの内科の先生は、自分を含めてスタッフ全員の抗体検査を経費で行ったと聞きます。

また、プロ野球は開幕前に抗体検査をして、巨人の坂本選手と他1名に後日PCR陽性が出たことで大騒ぎになったのも最近です。

 

費用は、15000円前後が多いようです。

 

この検査の意義とどんな人が受ける必要があるのでしょうか?

 

 

 

抗体検査は抗体の有無なので、抗原の有無とは違うし抗体が完ぺきではない

 

当然ですが、現在進行形の感染を示すものではありません。

 

「他の人に移しうる」のかどうかは、抗原を持っているのかどうかを調べないといけません。通常はPCRなどで、RNAを増幅して調べることになります。

 

抗体検査は、自分がコロナに反抗した痕をみるもので、IgGとIgMを図ります。

 

・IgM値が陽性だった場合、まだ体内にウイルスがいる可能性があり、他社への伝播をを防ぐ対策が必要になる。


・IgG値が陽性だった場合、陰性の人もよりも、今後コロナに罹患しにくい可能性ある

 

 

 

すなわち、今後の疫学検査を経て確認されることになりますが、

現時点で世界中で最も効果がある可能性が高い武器を体内に保有することになります。

 

もちろん過去に重症化のリスクを抱えて乗り切ったことを意味しますが

 

 

 

じゃあなぜ産業医なのか?

 

産業医の役割を探してみました。

 

>産業医科大学HPより

 

1 職場巡視
産業医は、毎月1回以上、職場を巡視することが求められています。労働者の実際に働く状況を理解することは産業医として適切なアドバイスを行うための基本であり、また労働者の健康を保持するために改善が必要な環境や作業があれば、その指導を行います

 

2 作業環境による健康リスクの評価と改善
化学物質等の有害性に関する情報と、実際の作業環境や労働者の曝露の状況を総合的に判断し、健康障害が発生するリスクを評価します。リスクが高いと判断された場合には、事業者に対して、指導や勧告を行います

 

3 健康教育・労働衛生教育
職場で実施する集団教育は、有害物質や有害エネルギーによる健康障害の防止から生活習慣の改善に関するものまであり、産業医は幅広いテーマに対応する必要があります。その中でも最近の企業の状況を反映して、メンタルヘルス教育の実施機会が増えています。

 

4 衛生委員会への参加
労働者の健康に関する事項を審議する場として各事業場に衛生委員会が設置されることになっています。産業医は衛生委員会の正式なメンバーとして、労働者の健康を保持するための個別的な事項の検討だけでなく、職場の安全衛生体制の構築にも参画します。

 

5 健康診断と事後措置
すべての労働者は、毎年1回以上の健康診断を受診することになっていますが、当然のことながら健康診断を実施するだけでは健康状態は改善しません。結果に基づき、生活習慣の改善の指導を行ったり、健康状態によっては本人と職場に対して働き方の改善を助言します。

 

 

 

私は、コロナ感染症COVID-19感染症受け入れ施設の一般職員ですので、直接診療機会はありませんでしたが、不特定多数の疑い症例を受け入れている環境なので、環境要因は、一般の方よりリスクは高いです。

 

 

また職員によっては、コロナ専門部署で働いているものいます。

今回の疫学検査は、専門部署は全員必須、残薬で一般職員から募集という形でした。

 

すなわち、労働環境の管理という産業医の職務に関連するマターのようです。

 

 

職員からのコロナ陽性者は出ていない当院ですが、実際のところ専門部署で感染が生じているのかという疑問はあります。

 

しかしこれは臨床上の問題で、産業医、つまり労務管理上は課題なるリスクを医療者に課したことが認識されているということです。

これでもし多数の陽性者が出れば、完全なるプレコーションと陰圧管理で行っても、従事した医療者はかなりのリスクを負うということになります。

 

関東圏の医療者の負担は、すでに限界と内内で伝わっていますし、待遇の悪化などで離職者が相次いでいて、現場はすでに戦時と聞いています。

 

 

結果説明は、研究者のマターではなく管理上のマターである。

理解できました。で、この結果を国にもっていって、対応改善を求める。

 

 

 

 

 

個人にとっては?

 

個人にとっては、先ほど言ったように隠れた武器になるので、現時点では最強です。

予防接種による抗体産生量 < 実感染による抗体産生量

 

なのは誰もが知っていると思います。

インフルエンザは、同じシーズンに一度かかると、同じ型はもうかからないことが多い。家族に移して治った人は、自分は抗体を持っているので、家族から再び戻ってかからない。  それと同じです。

 

悲しいのは、抗原検査を求められるかもということですね。

結果が出るまで自宅待機?

言われるかもしれません。

 

では。

 

 

 

Be early-adapter しぶとく適応する能力ほしい

「自分が言いたいことは、わかってもらえるまで、わかりやすく、ちょっとのことでも繰り返し繰り返し主張するべきである」

私の師匠が、いつも学会で同じ話をすることに対して質問した時に、もらった答えです。学術的には重複投稿ですが、人を説得するという点において、正しいです。

 

そのことを忘れていました。

押しつけや傾いた着想は論外ですが、学説や議論は、戦わせることで磨かれていく。

 

一本書くネタができるまで、、、、といいつつ、更新をサボるのは良くないですね。

普段の気づきを書くように軌道修正します。

 

 

 

ところで、本日はリモート会議です。

 

皆さんご存知のように、オンラインでも会議は結構いける

 

誰もがすでに納得していると思います。ただ上司たちは、やはりいごごちが悪いようです。

 

症例カンファレンスなどは最たるもので、われわれは以前からプレゼン資料を、電子カルテから独立かつ個人情報削除の形で作成してきましたので、渡りに船のはずでした。

 

しかし責任者たちは、責任の所在を理由に対面でオンサイトで行いたがります。

 

一時期「オンラインも検討す」だったのが、実は結論ありきで、実行する気はなかったようです。

「個人情報がもれたらどうする」

「さぼるひとがでてくる」

「通信環境がない人がいる」

「オンラインでのやり方がわからない」

 

できない理由ばかり考える。 

リスクがあるからしないとのこと。

こんな責任者いらねえ。 

 

 

っていうか、こんな組織が日本中どこでもあるんですよね。

それが日本社会の閉塞感と停滞感の一因になっているのは間違いない。

オンラインも広がらない。

 

 

 

でも落合陽一さんはオンライン化でより実力差が広がるといっているよ

 

 Newspicsで落合さんが言っています。

オンライン化で、移動時間が無くなったので、より予定が詰め込めるようになったと。

東大の教授も、京都の自宅にいながら東京の会議に出れると。

 

 

売れっ子はより売れっ子になり、ない人は仕事がなくなる。オンライン化はより格差を広げるのだそうだ。

 

 

 

最近は経済を回しだしたせいで、4-5月の仕事が後ろ倒しにどどっとなだれ込んできていまして、多忙な人も多いのでは?

 

え?忙しくないって?   それは少し焦った方がいいです。

 

 

 

製薬業界の変化は坑道のカナリアか?

 

われわれの業界でも、MRさんの面談希望が増やさはるようになりました。

オンライン講演会なども一日で複数個所で行われています。販売促進の方法が限られてしまったのが原因のようです。

 

アポを取って面会というのが、規制がかかってて、新製品の案内すらできないらしい。

昔のMRさんは足で稼いでいました。

最近のMRさんは、方向性が変わって、だんだん数が減ってきているように見えます。

今回のコロナで、さらに人が減る可能性を考えています。なぜならば、移動時間が減って、どこでも何人にでも同時配信できるようになり、人数がいらなくなるからです。

 

 

オンライン面談も増えました。毎週何件かしている印象です。 

 

われわれ医師も、診察がオンラインで完全に住む日も、少なくてもハイブリッドは遠くない未来でしょう。

 

手術が遠隔でロボットというのは、近未来です。

またナノマシンによる、内部からの修復の方が早いかもしれません。

 

 

医師は内科系から外科系に、ITに侵されるといわれています。

放射線科医は最前線のようです。

 

 

 

MRの淘汰の次はわれわれかも、準備が必要ですね。

 

 

オンラインなどによる環境の変化にも、しぶとく変化していける人が生き残るのは、間違いないでしょう。

persistentからearly-adapterをめざしましょう。