管理人です。
たまには本業についての備忘録です。
ポストコロナ時代に自分が残れるかわからない中ですが、まじめな投稿です。
まずは手関節から。
手関節の関節破壊の病態
多くの患者が罹患する好発部位で、初発関節であることも多く、関節破壊の影響が出やすい部位である。
橈骨手根関節、手根中央関節、遠位橈尺関節が滑膜関節であり、滑膜炎が継続すると軟骨の損耗や手根骨の破壊を生じる。
橈骨手根関節や手根中央関節に骨性強直(bone ankylosing)を生じると、関節可動域制限が生じる。
これらの病態から、手根骨高が低下し掌背側の橈骨三角骨靭帯などの靭帯の弛緩を生じ、不安定性な手関節が出来上がる。
多くの場合、手根骨は橈骨遠位端の傾斜に従って、尺側、掌側、回外方向に移動する(carpal translation)。
この手根骨の移動がRAに特徴的な手根骨の掌側脱臼や、手指伸筋腱断裂、長母指屈筋断裂などの代表的かつ重大的な合併症の原因となる。
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手術適応は?どうなったらどうする?
・手術適応
十分な薬物療法や関節内注射を行ってもコントロールできない滑膜炎、前述の手根骨脱臼や腱断裂などの合併症、関節破壊による能力障害が適応になる。
またリスクが高い際には、予防的手術も積極的に考慮すべきである。例えば単純X線におけるscalloping signと尺骨頭の背側脱臼は、遠位橈尺関節を原因とした手指伸筋腱断裂のリスク因子である。
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・手術術式
関節破壊を生じる前の薬物療法抵抗性の滑膜炎には、滑膜切除術が施行される。腱鞘滑膜の切除もできる直視下の滑膜切除に加え、靭帯への侵襲が少ない関節鏡下の滑膜切除も有用である。橈骨手根関節だけでなく、手根中央関節や遠位橈尺関節の確認も行わなければいけない。
しかし、現代の薬物療法の進歩により、事実上滑膜切除を行うことはなくなった。
かわりに内科のDrでも関節腔内注射を行われることが多くなった。
破壊が進んだ関節では、手関節の安定性により、橈骨手根関節や遠位橈尺関節に対する手術が組み合わせて行われる。
安定性評価には、Schulthess分類が最もよく用いられ、Type I(ankylosis type)とType II(osteoarthritis type)が安定型、Type III(disintegration type)が不安定型とされる。
安定型の手関節には、Darrach法(尺骨遠位端切除術)やSauvé-Kapandji法(棚形成術)が用いられる。不安定型の手関節には、前述の術式に橈骨月状骨関節固定(部分手関節固定術)の併用や、手関節全固定術が用いられる。
また一般化しているわけではないが、一時的に関節固定を行いのちに解除することで線維性癒合を得ようとする方法や、概念を引きついで骨切りを追加するpalmar shelf osteotomyなどの派生手術も存在する。
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手関節の関節可動域減少、とくに掌屈可動域の減少は手指機能に影響するため、可能な限り可動性を残すことが望ましい。
一般的には、20-20 の可動域 すなわち40度の可動域を最低限残したいというのが、術者間の常識になっている。
私は安定型の手関節では機能を重視し、Sauvé-Kapandji法を第一選択としている。一方、不安定型の手関節では機能より安定性を優先すべきと考え、橈骨月状骨関節固定術や三角骨を含めた固定術を行う。術式の選択は、bone stockの量に依存するので、短縮量などを考慮して計画を練るのがよい。
また近年、本邦初の人工手関節が開発され、DARTS人工手関節®として使用可能になった。現状では一定の条件を満たした手外科専門医しか使用できないが、短期では良好な治療成績が報告されている。
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注意点など大事なことは何?
・気を付けておきたいポイント
手関節の可動域は可能な限り温存することが望ましいが、滑膜切除ために侵襲を加える関節は、最小限がよい
手根中央関節は特に、単純X線では関節裂隙が残存しているように見えても損傷を受けていることがある。不用意に滑膜切除を行うと、軟骨下骨の露出が起こり、骨性強直が生じることが少なくない。
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これらの注意点を気にしながら手術したら、ちょっとは成績が向上しますかね?
今度はTipsの載った本が欲しいなと思いました。