リウマチ外科医の徒然草

リウマチ診療を中心に過ごす外科医の、日々あったこと、考えたことをつづります

SARAH trialがもたらすリウマチ手の未来はいかに?

リウマチ外科とは切っても切れない重要な論文が2015年に発表されています。

もうすでに2年たっていることにも驚きですが、

なによりもLancet(IF: 44.002)に収載されたことがすごいです。

 

リウマチ患者に対して、ハンドエクササイズを最大12か月間、RCT(randomized control study)で500人弱の対象に対して行った結果の論文です。

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

私は統計には疎いですが、少し詳しく書いてみようと思います。

・英国の17のナショナルセンターで多施設のRCTとして施行

・通常群244名と通常+手のエクササイズ(SARAH)群246名に無作為割り付け

・通常群:  関節保護指導と装具、最大3回の通院指導(1.5時間まで)

・SARAH群:  通常群+12週間の自宅での運動プログラム(6回の通院指導)

7種類の可動域訓練や4種類の抵抗運動(下図) 修正ボルグ指数で強度調整

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主要評価項目・・12ヵ月目のMHQ(Michigan Hand Outcomes Questionnaire) 

副次評価項目・・MHQの細項目と痛みのVAS

 

 

・コスト算出のためのメンタル評価にEQ-5DとSF-6Dを使用

  治療単位数から費用を概算し、EQ-5D/SF-6DからQALYと1QALY毎のコストを算出

 

・外来患者の割合       通常群・・199/242例、SARAH群・・198/246例

・途中脱落者:  比較的若年が多く、通常群<SARAH群

・合併症:      計103例、死亡2例、重篤な合併症3例、腕の痛みの悪化2例(SARAH群)

        疾患活動性の悪化86例(通常群:38・SARAH群:48)→脱落

 

・DMARDs:      全体の90%以上が使用

 csDMARDs・・MTX 342例  bDMARDs・・ADA 42例、ETN 34例

・外来通院:    通常群のほぼ全員が3回来院、SARAH群の184例(75%)が6回来院。

 

・自宅での運動(SARAH群のみ):運動頻度が4ヵ月と比較し12ヵ月では低下

・評価項目:    手の筋力や巧緻性はSARAH群で2倍の改善、柔軟性は両群で同等

 

SARAH群で4ヵ月目に圧痛・腫脹関節が減少

・コスト:      運動療法は156£/人・月必要で、SARAH群はさらに平均103£必要

・QALYの増加:  EQ-5Dで0.01、SF-6Dで0.02

 

→1QALY増加にEQ-5Dで9549£、SF-6Dで7440£必要

 

つまり、費用対効果で、

 

bDMARDsの費用は7000-10000£/年・人(英国) かかるのに、

  運動療法の費用<<薬物治療の費用  となる。

 

費用対効果分析では20000-30000£/QALY以下であれば一般的に有効とされる。

 

SARAHは7440-9549£/QALYであり有用

(研究期間が1年であり低く見積もられている可能性)

 

 

【Summary】

SARAH法による運動療法は日常生活、仕事、筋力や感情面によい影響をもたらし、リウマチ患者の手の機能の回復や維持に効果的であった。

 

いかがでしょうか?

少し冗長な文章ですが、RA治療は画期的な原因に絡む治療が出ない限り、それまでは局所への安価で効果の高い治療の検討が主流となります。