リウマチ外科医の徒然草

より良く生きるための抜け穴探しのゆる~いブログ

セロネガティブの関節リウマチとは何者なのか? 明らかに異なる臨床像が悩ましい

以前に抗CCP抗体についての記事を書きました。

 

www.orthopaedicrheumatologist.com

 

 

今となっては、ACR/EULAR2010分類基準を用いた関節リウマチの診断に、

抗CCP抗体(ACPA)は欠くことができないほど重要な検査項目となりました。

 

 

ところが、この抗CCP抗体やリウマチ因子(RF)が陽性で、しかも高力価の患者さんの診断には困らなくなった一方、リウマチ医たちは新しい悩みを抱えるようになったようです。

 

それは、セロネガティブseronegativeです。

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そもそもserologyとは何か?

 

Serology is the scientific study of serum and other bodily fluids. In practice, the term usually refers to the diagnosticidentification of antibodies in the serum.[1] Such antibodies are typically formed in response to an infection (against a given microorganism),[2] against other foreign proteins (in response, for example, to a mismatched blood transfusion), or to one's own proteins (in instances of autoimmune disease).

Wikiより。

 

簡単に言うと、診断のための血清抗体検査たち 

と思っておけばいいでしょう。

 

つまりは、体の反応のある・なしを単に述べているに過ぎないのです。 

 

 

大事な論文が大村先生から報告されています。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsci/32/6/32_6_484/_pdf/-char/ja

 

血清反応陰性RAにおける意義と、serologyについての考察です。

 

 

私は外科医なので、細かい抗体学のことについては全く学がありません。

しかし、リウマチ医の仕事は昔は、

 

明らかなリウマチ患者(seropositive)で破壊のある方

 

の治療を行っていたのに対し、現在は診断がつかない程度の水面下の方を対象とするようになり、

 

seronegativeの時点で診察、診断をつけなければいけない。。。。

 

そんな毎日になりました。

 

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セロネガティブ(SNRA)とはどんなものなのか?

 

 前述の論文内にも書いてあります。

 

昔はせろセロネガティブ(SN)は血清反応陰性関節リウマチといって、診断がつかないところの未分類関節炎を、一緒くたに放り込んでしまうバケツのような存在でした。

 

したがって、脊椎関節炎spndyloarthritisや膠原病がある一定数混じりこんでいた可能性が否定できません。

 

 

逆に言うと、現在でもSNである場合は、鑑別疾患をつける能力が多大に必要になるのです。 その中で、病状が明らかに異なるRAらしい病態の方をSNRAに振り分けて治療することとなります。

 

それを理由に、欧米のバイオ関連の論文などは、かならずserologyが記載されているとともに、陽性率がとても高い。 セロネガティブは別の枠に彫り込んでいるのでしょう。海外の喫煙率の高さもこれに拍車をかけているかもしれません。

 

いずれにせよ、SNRAは臨床診断ということとなります。

 

なのに、病状が異なるのです。

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遺伝要因、つまりshared epitopeが異なるということも背景にあるのでしょう。

 

 

しかし

どうも末梢優位の腱鞘炎症状を併発することが多いような気がします。

 

屈筋腱鞘炎のきついやつは、まるで化膿性腱鞘炎のような臨床像を取ります。

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この例は通常の屈筋腱鞘炎です。

 

 

正中神経の圧迫症状と、夜中および起床時の指の痛さが主訴になります。

これまで検証が手関節のすぐ隣にあることから、私は関節内注射で対応することを第一選択としてきました。その理由はステロイド使用で、神経周囲に巻くのをためらうからです。関節軟骨の少しの減損の方が、効果と比較するとましであると。。。

 

 

しかし、最近症状の強い症例を経験しました。

 

・両手関節の関節滑膜炎

・両屈筋腱鞘炎

 

両方あるのです。これまでの方針通り、関節内に注射をしました。

効果はあったのですが、関節炎は減ったものの、腱鞘炎症状は一向に改善しない。患者さんの主訴はほとんど改善がなかったのです。

 

臨床上の優先順位

関節 < 腱鞘(神経症状)というのが現実問題のようです。

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以前、同様のとてもきつい屈筋腱鞘炎で滑膜切除と手根管開放をしなくてはならなかった一例を経験をし、症例報告をしたことがあります。

 

その方は、その時点はSNRAでした。やっぱり。。。

 

ところが、半年もしないうちに、seropositiveになり、、、

 

 

やはり、SNRAだからといって、甘く見るわけにはいかないとともに、診断が悩ましい。しかも意外と症状が激烈。。。。

ある種、ガソリンの引火のようです。

 

 

先日、リウマチ内科の高名な教授先生に症例提示をしたところ、

 

「こういう、SNRAの症例は、意外とcsDMARDsが効くよ。例えばリマチルとか。。。」 *1

 

そういうもんなんでしょうか?

リウマチ内科の若手はこういう症例に、がんがんバイオを入れているじゃないですか!?  

 

リウマチ外科としては、学問よりも患者の主訴が気になります。

腱鞘炎症状は局所治療にも結構抵抗するのです。 先日も別の症例ですが、SNRAで、後脛骨筋腱周辺にびっくりするくらいの腱鞘滑膜炎と、水腫があります。。。

 

 

やっぱり、SNRAは違う病気と思った方がよさそうです。。。。

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*1:+_+