私はリウマチ医ですが、通常の外傷も対応します。
8歳の男児で、滑り台から親が目を離したすきに落ちたようです。
その写真がこれです。
誰が見ても 「うぎゃっ」ですよね。
子供は泣き叫んで、親は狼狽して目も当てれません。
先生によっては、強引に透視室で整復を試みるかもしれません。
子供の絶叫を聞きながら・・・・
これだけの転位をするということは、
骨膜は完全に破たんしています。
そして、ふつうは回内筋や手指屈筋の筋もしくは筋膜を挟んでいます。
まず引っ張ってもおそらく整復されないでしょう。
普段は緊急は私の担当ではないので、そっとしておくのですが、
今回に関しては、乗りかけた船ということで、
通りがかりの私が担当することになりました。
手術は全身麻酔、背側から小皮節を行ってエレバトリウムを挿入。
いつもの自分のやり方でさせてもらいました。
ピンニングのみとくに、intrafoculが主流でしょうが、
わたしは、このような軟部の挟まりこみが予想されるときには、
この方法を推奨しています。
ピンニングを行って、骨片間を固定し、安定性が取れたので
無事に手術は終了しました。
ところで、
この骨折の正式な呼び方は何でしょうか?
・橈骨遠位端骨折?
・橈骨遠位部骨折?
・橈骨骨幹部骨折?
日本骨折治療学会のHPでは、橈骨遠位端骨折です。
Wikiですが、どこかからの引用のようです。
骨端部骨折骨の端部における骨折を指す。1つの骨につき端は2つあるので、遠位端骨折及び近位端骨折として区別される。上下肢(手足)においては体幹に近い方の骨端を近位端、遠い方の骨端を遠位端とし、体幹部では口に近い方の骨端を近位端、肛門に近い方の骨端を遠位端とする。
コトバンクでは、
骨幹は、骨の中央部にあたり、周囲はかたくて厚い皮質骨(ひしつこつ)で取り囲まれ、筒のような形をしています。皮質骨は、緻密(ちみつ)な細い骨の組織が整然と並んでいるので、とてもじょうぶです。
長管骨の両端は骨端といい、その先端の表面は、なめらかな関節軟骨でおおわれています。
骨幹端は、骨幹と骨端の移行部にあたります。骨幹端の皮質骨は薄く、内部は網目状の海綿骨(かいめんこつ)でできています。
小児でなぜ、この部位で骨折するのか?
それは上記にあるとおり、”骨幹端で皮質が薄いから”です。
そうすると、意味合い的には橈骨遠位骨幹端骨折とするのが正確といえます。
一方、骨幹部は、おおむね骨の中央1/3のことを指します。
ということは、骨幹部とはいえこれだけ遠位を骨幹部というのははばかられます。
では、遠位端骨折というのがやはり正しいのでしょうか?
学会のHPにあるので、それでOKとも言えますが、
それでは議論になりません。
遠位端骨折は、遠位骨端部の骨折ということです。
ということは、骨端核は正常な本骨折は範疇に当てはまらないような・・・
老人の橈骨遠位端骨折は見事に骨端部で折れます。
では、やはり今回はいろいろ言いましたが、
お茶を濁して、「遠位部骨折」ということでよいでしょうか?
どなたかお答えをお持ちの方がおられたらおねがいします。